「仕事が速いのにミスしない人は、何をしているのか?」から学ぶ効率的な仕事術

■はじめに

 「やることが時間内に終わらず残業をすることになってしまった」、「終わったと思っていた仕事にミスが見つかりやり直しに」なんて経験はありますでしょうか?ミスをせず早く仕事を進めるためにはどうすれば良いのでしょうか。まず、人間である以上ミスをしないということはありえません。そこで、ミスをいかに繰り返さないかの仕組みを築き上げていくことが重要なのです。本書では、失敗学会創設者の1人である飯野謙次氏の著書を紹介します。

■こんな方が読むべき

  • 何度も同じミスを繰り返してしまう方
  • 効率的に仕事を進めたい方
  • ミスをしないための仕組みを作りたい方

■要約

①なぜ仕事が速い人がミスをしないのか?

 私たちは何かをする上でミスと隣り合わせの状態で生活しています。日常生活の小さなミスから仕事上の大きなミスまで大小様々なミスの脅威に晒されているのです。そのミスの脅威を上手くかわして何事もなかったかのように効率的に物事を進めていく人があなたの周りにいませんでしょうか。そのような方々は先天的にミスをしない能力があるのではなく、ミスをしない方法を知っており、実践しているのです。ということは、そのミスをしない方法を知り、実践することで誰でもミスをせず効率的に仕事を進めることができるようになるのです。

 実は全く予想だにしていなかったミスはほとんど存在しません。東日本大震災の福島原発事故でさえも予想可能な事故だったと失敗学会では結論づけています。祖先が残した「ここより下に家を建てるな」という石碑が事故後に話題となっていましたが、この事実が共有されていれば津波の脅威というのも事前に対策できていたはずなのです。過去の事例を知ることによりどんなミスが発生しうるかを知ることが重要なのです。

 ミスをした際、「以後気をつけます」と言う方が多いと思います。しかし、「以後気をつけます」の発言だけでミスを繰り返さなくなるのは稀です。いつまでも1つの事柄に注意を向け続けることは不可能だからです。そこで、ポイントとなるのはミスをした人ではなく、ミスが発生しうる仕組みになっていることが悪いと考えることです。ミスが発生しないような仕組み作りをしてしまえば、以降そのミスを気にする必要はなくなります。

②うっかりミスを減らす仕事術

 ここでは、忘れ物を題材に失敗学観点からどのような対策をすれば忘れ物がなくなるのかということを説明します。

必要最低限を見極める

 持ち歩く物が多ければ多いほど物を無くしやすくなります。それは管理する物が多すぎて管理しきれなくなっている状態になっているということです。自身で管理できる範囲内の物に収めるよう必要最低限の物を持ち歩くようにしましょう。

習慣に組み込む

 外出先で仕事をする際に、PCのACアダプタをうっかり忘れることが稀にあります。これは「持たずに出かけられない」仕組みを作ることで解決できます。日々の行動の40%が習慣的な行動で占められています。習慣は毎日無意識に行なっている行動なので、忘れることはほとんどありません。この習慣を上手く使うことで、忘れ物を減らすことができます。例えば、毎日仕事に出かける時にカバンを背負う習慣があるとすれば、前の晩に持って行くものをカバンにいれておくことで、忘れ物を激減させることが可能です。履いていく靴の中に入れておくなんてことも有効です。

③メールを賢く活用する仕事術

・記録として残す

 人の記憶はうつろいやすく、過去に合意した内容でも数週間後に全く違う内容に置き換わって記憶されているということは珍しくありません。確かにメールよりも対面で話しをした方がスムーズにコミュニケーションは取れますが、その内容を覚えられないようでは意味がありません。そこで些細なことでも備忘録としてメールを送ることが重要です。特に意見がコロコロ変わるような方には特に効果的面です!

・フォルダ分けで管理、整理する

 メールをフォルダ分けし、読んだメールはさっさとフォルダに分けてしまうべきです。大分類のフォルダを15個程度、さらに中分類のフォルダを2、3個作成し、読んだメールをその中に放り込んでいきます。フォルダの分け方は個人で使いやすいようにカスタマイズしてください。

 また、回答を求められているメールはすぐに回答できるものと回答できないもので対応が分かれます。すぐに返信ができるものであれば、メールを開いてすぐに返してしまいましょう。後に回してしまうともう一度メールの内容を確認しなければならないので二度手間になります。すぐに回答できないものは、読んだ後に未読メールにして、後でもう一度確認できるようにしておきましょう。今すぐに対応はできなくても、未読となっていることで後で確認することができるので、うっかり返信を忘れたというミスが減らせます。

④自分のパフォーマンスを上げる仕事術

・「仕事量」の管理法

 「自分に振られている仕事量が多すぎる」と思っている方、そう考えるのではなくミスなく上手く組み立てられれば仕事を抱え込まずに済むと考えてみてください。(もちろん例外はありますが。。。)

 まずは、仕事量を「自分の工数」として捉えられるようになる必要があります。仕事を依頼された時点でその仕事にどれくらいかかるのかをなんとなく考えておくのです。「自分の工数」を正確に計測するコツとしては、まずは様々な仕事に対して、予測の工数と実際に使った工数を記録することを繰り返していき、精度を上げていくしかありません。奥の手としては依頼者にどれくらいかかると思いますかと聞いてしまうのも手です。

・マルチタスキングをうまく活用する

 会社員として働いている方ならほとんどの方が、複数の仕事を同時並行で進めています。しかし、人が集中できるの仕事は一つだけです。複数の仕事を同時にこなすマルチタスキングではそれぞれの効率が落ちてしまい、結局それぞれ直列に作業した時よりも時間がかかってしまいます。

 しかし、脳の使い方が違うタスクの場合はマルチタスキングの方が上手くいくこともあります。仕事は大きく分けて「整理・調整する」「作り出す」の2種類に分けることができます。「作り出す」仕事は時間をかければ上手くいくというものではありません。アイディアが出てこなければ「整理・調整する」仕事を取り出すのです。感覚的に言うと、アイディアが出てこないというのは脳の思考が袋小路に入り込んでしまい、抜け出せない状態に陥っているということです。そこで「整理・調整する」仕事をすることで脳の違う部分を刺激し、凝り固まった思考をほぐす必要があります。

(こちらで紹介している「アイデアの作り方」でも同様にアイディアに行き詰まったら一旦離れて違うことをすることを勧めています。読んでいただけたら飛んで喜びます。)

⑤自己流仕事術の作り方

・ミスの4つの要因

ミスの要因としては、「注意不足」「学習不足」「伝達不良」「計画不良」の4つに分類ができます。この4つの要因を排除できるように自己流の仕組みを作ることでミスを減らすことができます。以下にそれぞれの要因に対する対策の考え方を示します。

・うっかりミスをなくす力の抜きどころ(注意不足)

 「注意不足」によるミスを減らすためには「注意すべきタイミング」と「ダブルチェックの質」が重要です。「注意すべきタイミング」は他人の力や機械の力を利用してその時間に知らせてもらうようにすれば良いです。また、「ダブルチェックの質」はダブルチェックの仕方やチェックリストの扱い方を上手く考える必要があります。

・常識や経験に縛られない(伝達不良)

 伝達に最も重要なのは個人間で話を合わせることです。しかし、個人によって解釈が異なるような暗黙知があるということも理解しなければなりません。暗黙知を形式知(知識として皆が共有できるもの)に変換しなければなりません。

・自分の頑張らせ方(学習不足)

 新しい知識を身につけるための学習には動機付けと学習を楽しむ工夫が必要です。その動機は不純なものが混ざっていたほうがよいこともあります。

・計画不良が全ての失敗の引き金(計画不足)

 生活で計画を立て、それに従って動き、結果を得るというサイクルを繰り返しています。結果がよくなかった場合に「考えが甘かった」と言うような漠然とした感覚で終わらせるのではなく、なぜ上手くいかなかったのかを分析し、次にどう活かせば良いのかを学ぶ必要があります。また、計画を立てる場合に自分の持てるリソースを全て仕事に注ぎ込むような計画ではなく、プライベートも考慮して計画を立ててください。

■まとめ

  • ミスを防ぐためには、「過去の事例を知ること」、「ミスを防ぐ仕組みを作ること」が重要である。
  • ミスをなくすためには4つの要因「注意不足」「学習不足」「伝達不良」「計画不良」を排除する。
  • 自己流のミスをなくす仕組みを作っていく必要がある。

■感想

 失敗学の講義(本書の著者とは別の方ですが)を聴講したことがあります。その講義でも本文で再三言われている通り、「ミスをする人が悪いのではなくミスが発生しうる仕組みが悪い」ということを強調されていたことが強く印象に残っています。また、「言い訳がミスの本質を解明するための重要なヒントであり、その言い訳を分析し、原因の根本を追求することで、ミスが再発しない環境を作り上げていくことができる」という考え方も大変共感したことを記憶しています。自分なりのミスをしない仕組みを作り上げていくことで、「仕事が速く、ミスがない」人間に近づいていきたいと思います。

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